モラル・ハザードとは
モラル・ハザードって何?
■概要
モラル・ハザードとは元々は保険用語であり、保険に加入していることによりリスクが増大するような行動をとることです。
事故が起きても保険でカバーできるため、リスクが高い行動をとるようになり危険事故の発生確率が上昇することをいいます。
転じて、近年は経営者の経営倫理の欠如など、ビジネス上に必要な倫理観の欠如を意味する言葉として使われることが増えています。
特に、金融機関が政府の救済を予見して経営や資産運用などについて自己規律を失うことを指す場合が多くなっています。
■金融危機とモラル・ハザード
モラル・ハザードが世間で大きく認知されたのはリーマンショックに端を発した2008年の金融危機がきっかけです。
金融危機以前、投資銀行などの巨大金融機関はサブプライムローン関連の取引で莫大な利益をあげていました。
しかし、サブプライムローンを含んだ大量の証券化商品が不良債権化し、経営破綻のリスクが飛躍的に高まりました。
その際、金融機関の破綻による金融システムの崩壊や恐慌の発生を恐れて政府が公的資金を注入して金融機関を救済しました。
ただ、これでは最終的に政府が救済してくれるので金融機関は際限なくリスクをとるようになります。
その結果、リスクをとるだけとって莫大な利益を上げる一方、万が一に大きな損失を抱えてしまった場合は政府に救済を求めるという非常に無責任で倫理観が欠如した行動をとる金融機関が出てきます。
これがモラル・ハザードです。
こうした組織レベルのモラル・ハザードがある一方、個人レベルでのモラル・ハザードも存在します。
投資銀行のトレーダーなどの従業員はトレードで得た利益から莫大なボーナスが支給されていました。
しかし、もしトレードで莫大な損失を出してもせいぜい失業するくらいであるため、自分の収益の最大化のために可能な限り大きなリスクをとるようになります。
その結果、1人のトレーダーが数千億円単位の損失を出すという事件もしばしば発生しました。
これもモラル・ハザードといえるでしょう。
このように、自分たちの収益を最大化するために際限なくリスクをとることで、金融危機のように社会全体に大きな影響を与えることもあります。
当初、サブプライムローン関連で経営破綻の危機に瀕していた金融機関の救済はモラル・ハザードが発生するという理由で反対されていましたが、最終的には莫大な資金が各金融機関に注入されることになりました。
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